スポンサーリンク

参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題60 事業譲渡と商号続用者の責任

目次

 

【参考答案】

1 Xは、Y社に対し、預託金返還請求を行っているところ、会員契約はXA間で締結されたものであり、原則としてY社に対して請求することはできない。
 また、Y社はA社から会社分割により本件ゴルフ場の事業を承継したものの、Xに対する預託金返還債務は承継していない。そのため、Y社はA社の商号である「株式会社A」を続用したわけではなく、「Bゴルフ倶楽部」という事業の名称を引き続き使用したにすぎず、A社からY社への事業の移転に際して、事業譲渡という形式ではなく会社分割が用いられたことから、商号続用者の責任を定める会社法(以下法令名省略)22条1項を直接適用することはできない。
 そこで、22条1項を類推適用し、Y社に責任を問えるかが問題となる。

2 22条1項の趣旨は、商号続用により生ずる同一事業主体による事業継続や債務承継の外観に対する信頼を保護することにある。
 そうすると、「商号」以外の事業上の名称であっても、①それが分割会社の事業主体を表示するものとして用いられている場合には、②特段の事情のない限り、同一事業主体による事業継続や債務承継についての債権者の誤認が生じる危険が高いから、前述した同条項の趣旨に照らし、同条項の類推適用が認められると解する。

3 本件クラブは預託金会員制のゴルフクラブであり、一般にこのようなゴルフクラブの名称は、ゴルフ場の施設だけでなく、これを経営する事業主体をも表示するものとして用いられている。そのため、「Bゴルフ倶楽部」という名称も事業主体を表示するものとして用いられているといえる(①充足)。
 そして、Y社は、本件ゴルフ場の事業を承継した後も、「Bゴルフ倶楽部」という名称を引き続き使用している。また、A社およびY社は、Xを含む会員に対して本件書面を送付しているものの、その内容は、Y社が新設されたことや会員権の株式への転換を依頼するものにとどまり、A社のXに対する預託金返還債務をY社が承継しない旨を通知したとまではいえない。そうだとすれば、会員であるXにおいて、事業主体の変更を知り得ないか、事業主体の変更を知っても譲受会社であるY社が譲渡会社A社の債務を引き受けたと信じることは無理からぬものというべきであり、上記信頼を保護する必要がないといえる特段の事情も認められない(②充足)。

4 よって、Y社には22条1項が類推適用され、Y社はA社のXに対する預託金返還債務を弁済する責任を負うため、Xの請求は認められる。

以上

コメント