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【参考答案】
1 Y社は、本件代理店契約9条2項の任意解約条項に基づき、X社に対して2か月前の告知による解約の申入れを行っている。この解約申入れは契約文言上は適法に見えるが、20年以上にわたり継続してきた本件代理店契約を、Y社が一方的に解約することが認められるか。任意解約条項の効力が制限されないかが問題となる。
2 継続的な商品供給契約においては、取引が長期間にわたって継続されることにより、当事者間に契約の存続に対する合理的な期待と強固な信頼関係が形成される。また、販売店側は当該商品の販売のために多大な関係特殊的投資を行っているのが通常である。
したがって、たとえ契約書に任意解約条項や期間満了による終了条項が定められていたとしても、民法1条2項の信義則上、その権利行使は無制限に認められるものではない。具体的には、解約権の行使が認められるためには、契約関係を維持することが当事者にとって酷であるといえるような、やむを得ない事由が必要であると解するべきである。やむを得ない事由の有無は、①解約者側の業務上の必要性、②被解約者側が被る不利益の程度、③十分な予告期間の付与や損失補償といった代償措置の有無等を、総合的に考慮して判断されるべきである。
3 まず、Y社が解約を申し入れた理由は、近年の売行き不振を挽回するため、小売店に直接販売するという経営方針の変更であり、X社に重大な契約違反等は認められない。そうすると、X社の不利益を強いてまで直ちに解約しなければらないほどの解約者側の業務上の必要性は認められない。
次に、X社は過去20年以上にわたって大阪府における「室町」の専売店として指定され、同銘柄を主力商品としてアピールし、大きな収益源としてきた。現在の小売店舗網はX社の長年の努力によって構築されたものであり、X社には契約継続に対する強い期待と、投下資本の未回収利益が存在する。解約によってX社は経営状態が急速に悪化し、借入金の返済にも窮するなど、被る不利益は極めて甚大である。
さらに、Y社はわずか2か月前に解約を申し入れただけであり、X社が投下資本を回収したり、代替商品を見つけたりするための十分な猶予期間を与えていない。それどころか、X社が長年培った顧客名簿を提出させて一方的に利益を収奪しようとしており、損失補償などの代償措置も一切講じていない。
これらの事情を総合的に考慮すれば、本件においてY社に契約を終了させてもやむを得ない事由があったとは到底認められない。
4 したがって、Y社による本件解約申入れは、やむを得ない事由を欠き、信義則に反し、権利の濫用として無効であるとの主張をすることができる。
以上

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