参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題24 時効の完成猶予・更新

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【参考答案】

第1 小問(1)について

 1(1) Aは、Bに対し、消費貸借契約(民法(以下法令名省略)587条)に基づく貸金返還請求権として、甲債権および乙債権(以下「本件各債権」という。)の合計500万円の返還請求を行っている。
 これに対し、Bは、本件各債権について消滅時効の抗弁(166条1項)を主張するところ、この抗弁が認められるか。

  (2) 本件では、Aは、自ら弁済期を定めて契約していることから、弁済期の到来と共に権利行使が可能であることを知っていたといえる。
 したがって、甲債権の弁済期は2026年1月10日、乙債権は同年3月10日であるから、原則として、それぞれ、5年経過時である2031年1月10日および同年3月10日の経過をもって、消滅時効が完成することになりそうである。

 2(1) もっとも、Aは2030年11月、Bに対して本件各債権の支払を求める手紙を郵送し、同月15日にBに到達している。これは「催告」(150条1項)に当たり、その時から6か月経過時である2031年5月15日までは、時効の完成が猶予される。
 したがって、上記2031年1月10日および同年3月10日の経過時においては、時効は完成していない。

  (2) そして、Bは、上記完成猶予の期間内である2031年4月21日、Aに対して100万円を振り込んでいる。この一部弁済は、特段の事情がない限り、残債務の存在を知っているからこそなされるものであり、債務全額についての「承認」に当たる。
 したがって、本件各債権の消滅時効は、2031年4月21日に更新され、同日から新たに5年の時効期間が進行することになる(152条1項)。

3 Aは、時効更新後の2031年6月10日に訴えを提起しており、同時点において消滅時効は完成していない。
 よって、Bの消滅時効の抗弁は認められず、Aの請求は認められる。

第2 小問(2)について

 1(1) Aは、Dに対し、消費貸借契約(民法(以下法令名省略)587条)に基づく貸金返還請求権として、丙債権400万円の返還請求を行っている。
 これに対し、Ⅾは丙債権について、消滅時効の抗弁(166条1項)を主張するところ、この抗弁が認められるか。

  (2) 丙債権の弁済期は2026年4月10日であり、Aは、自ら弁済期を定めて契約していることから、これを知っているといえる。
 したがって、権利を行使することができることを知った時から5年間(166条1項1号)が経過する、2031年4月10日の経過をもって、丙債権の消滅時効は完成することになりそうである。

 2(1) もっとも、Ⅾは2030年6月10日、丙債権の不存在確認の訴えを提起しており、これに対してAは、丙債権の存在を主張して請求棄却判決を求め、応訴している。かかる被告としての応訴が、「裁判上の請求」(147条1項1号)に当たり、時効の完成猶予・更新の効力を生じないか。

  (2) この点、「裁判上の請求」とは、訴訟提起を指すのが原則である。もっとも、権利の上に眠る者を保護しないことを趣旨の1つとしている。そして、債務者から提起された債務不存在確認訴訟において、被告である債権者が当該債権の存在を主張し、請求棄却の判決を求めた場合には、裁判上の権利行使の意思が明確に表示されているといえる。
 したがって、債務者から提起された債務不存在確認訴訟に対する債権者の請求棄却を求める応訴は、「裁判上の請求」に準ずるものとして、時効の完成猶予および更新の事由となると解すべきである。

  (3) Aは上記時効完成前の応訴により権利を主張し、2030年11月12日に、Dの請求を棄却する判決が確定している。
 そうすると、同日に時効は更新され(147条2項)、確定判決によって確定した権利として、時効期間は10年に伸長される(169条1項)。

3 以上より、新たな時効完成時期は、更新時から10年が経過する2040年11月12日となる。そうすると、Aは2031年5月5日に訴えを提起しているが、これは時効完成前である。
 よって、Dの消滅時効の抗弁は認められず、Aの請求は認められる。

以上

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