目次
【答案構成】
1 XがY₁・Y₂・Y₃に対し取りうる法的措置の提示
・株主代表訴訟(847条)による会社への責任追及
① 不足額塡補責任(52条)
② 任務懈怠責任(53条1項)
・株主Xから発起人らへの直接の責任追及
③ 第三者責任(53条2項)の可否
2 株主代表訴訟の訴訟要件の検討
(1) 株主代表訴訟の訴訟要件の提示
(2) 当てはめ
3 ①不足額塡補責任について
(1) 規範定立(52条1項・2項の要件・効果)
(2) 当てはめ(「著しく不足」に当たるか、注意義務違反(免責事由)の有無)
(3) 結論
4 ②任務懈怠責任について
(1) 規範定立(53条1項の「任務」の解釈)
(2) 当てはめ(記載順に善管注意義務違反、帰責事由、損害と因果関係)
(3) 結論
5 ③第三者責任について
(1) 問題提起(53条2項の「第三者」とはどのような者をいうか)
(2) 規範定立(「第三者」の範囲)
(3) 当てはめ・結論(株主Xの損害=間接損害)
【参考答案】
1 本問の事実関係から、株主Xは、Y₁からY₃に対し、以下の法的責任を追及することが考えられる。
まず、Y社に代わって株主代表訴訟(会社法(以下法令名省略)847条1項)により、①現物出資財産の不足額塡補責任(52条)および②任務懈怠責任(53条1項)を追及することが考えられる。
また、これとは別に、XがY₁らに対して直接損害賠償を請求する③第三者責任(53条2項)を追及することの可否も問題となる。
以下、これらの成否を検討する。
2 株主代表訴訟について
(1) 前提として、株主代表訴訟の訴訟要件は、原則として①6箇月前から継続して株式を保有する株主であること、②不正な目的がないこと、③会社に対する提訴請求、④③の請求の日から60日以内に訴訟を提起しないこと(847条1項、3項)である。
(2) 本問では、Xが株主であること、不正な目的の不存在以外の要件充足性は、事実関係から必ずしも明らかではないが、これらの要件は満たされるものとして、以下、Xが請求できる実体的な責任の内容について検討する。
3 ①不足額填補責任について
(1) 会社法52条1項は、会社設立時における現物出資財産の実際の価額が、定款に定められた価額に著しく不足する場合、発起人及び設立時取締役は、会社に対し、連帯してその不足額を支払う義務を負うと規定する。
上記不足額填補責任は、現物出資をした発起人(本件ではY₃)については無過失責任であり(同条2項本文)、その他の発起人及び設立時取締役(本件ではY₁・Y₂)については、職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明すれば免責される(同項1号)。
(2) 本件において、Y₃は、現物出資財産である山荘の価額を2000万円と定款に記載した。しかし、実際の時価は100万円程度であり、その不足額は1900万円にのぼる。これは定款記載額に「著しく不足する」場合に該当する(52条1項)。
そして、Y1・Y2は、過大評価の事実を承知の上で共謀しているから、職務上の注意を怠ったことは明らかであり、免責の余地はない。
(3) よって、Y₁からY₃は、Y社に対し、連帯して1900万円の支払義務を負う(52条1項、同条3項)。
4 ②任務懈怠責任について
(1) 会社法53条1項は、発起人及び設立時取締役がその任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと規定する。
ここにいう「任務」とは、発起人及び設立時取締役が、設立中の会社の業務執行機関として、その設立事務を処理するにあたって負う善管注意義務(民法644条)を指す。
そして、53条1項は会社設立に関する規定であり、資本充実の原則を確保する趣旨を含むから、発起人らの善管注意義務には、現物出資財産の価額を適正に評価し、会社の財産的基礎を確実に形成する義務が含まれると解される。
(2) 本件では、発起人兼設立時取締役であるY₁・Y₂および発起人であるY₃は、Y₃が出資した山荘の時価が100万円程度にすぎないことを承知の上で、共謀して定款に2000万円と記載している。
かかる行為は、会社の資本充実を著しく害するものであり、発起人・設立時取締役として会社の財産的基礎を確実に形成すべき善管注意義務に違反する。
また、Y₁らは過大評価の事実を承知の上で共謀して定款に記載しているから、悪意であり、帰責事由も認められる。
そして、上記義務違反により、Y社は、実際に確保されている資本金が登記上の資本金より1900万円不足するという損害が生じている。
(3) よって、Y₁からY₃は、Y社に対し、連帯して1900 万円の損害賠償責任を負う(53 条1項、54 条)。
5 ③第三者責任について
(1) Y社株主であるXが、「第三者」(53条2項)にあたるか問題となる。
(2) この点、発起人らの任務懈怠によって会社に直接損害が生じた結果、株主が被る損害たる株式価値の下落は、直接損害から反射的にもたらされる間接損害にすぎない。
このような間接損害は、任務懈怠責任(53条1項)を株主代表訴訟(847条)によって責任追及し、直接損害を回復させることにより、株主の利益を回復すべきである。
したがって、間接損害を被ったにすぎない株主は、原則として53条2項の「第三者」には該当しないと解する。
(3) 本件では、4記載の通り、Y₁らの任務懈怠によりY社に1900万円の損害が生じており、株主Xに生じている株式価値の下落という損害は、間接損害である。
よって、Xは、「第三者」に該当せず、Y₁ないしY₃に対して第三者責任(53条2項)を追及することはできない。
以上

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